五方ノ形

五方ノ形

五方ノ形は、二天一流の教えを具現化した形勢法です。

五方ノ形については、五輪書の水の巻に記されており、全5本で構成されています。
二天一流の系統には、二刀のみならず一刀や小太刀による形勢法を取り入れているところも少なくありませんが、これは二天一流が伝承されていく中で継承者が発展させたものであり、武蔵が直接的に残したのは、あくまでこの五方ノ形のみとされています。
五方ノ形は、日本刀ではなく細身で軽い木刀を使用し、右手に大刀、左手に小刀を手にしますが、他の流派にあるような木刀同士で早く激しく打ち合う動作はありません。強く大きな気位で、ゆっくりと流れるように相手を追い詰めていく動作の形です。打太刀が、無声による静・動・寂を繰り返す中で、仕太刀は、「ズウー」という発声とともに強い気位で攻め、「タン(断)」という発声とともに二刀の刃筋を立てて相手を斬り、「ヘッタイ(絶対)」という発声とともに相手の動きを封じます。このように、二天一流の五方の形は、まるで「能」の世界のような幽玄さに特徴があります。